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野菜を買う前に知っておきたい「残留農薬の基準緩和」のこと

EUで環境や健康への安全が疑問視され使用が停止されている農薬を、日本ではさらに緩和する可能性が高いそうです。

EUで規制が厳しくなっている農薬が日本国内で
基準緩和へ向かっている

環境のバロメーターといわれるミツバチ。近年大量死が問題視されていますが、彼らを大量死させる一因として農薬(ネオニコチノイド系クロチアニジン)があります。

2103年12月には、ECではミツバチ保護の目的からオニコチノイド系農薬クロチアニジンをミツバチが訪花する作物と穀物への種子消毒や土壌処理、茎や葉への散布を一時的(※)にやめています。また、クロチアニジンの他、ネオニコチノイド農薬系のイミダクロプリドとチアメトキサムも使用停止しています。
※使用停止を2年実施し、その間に研究を行い禁止にするか否か判断

それを受け、農林水産省も翌年には国内の取り組みを下記のように取り上げています。

2013年5月、EUは、蜜蜂への危害を防止するため、ネオニコチノイド系農薬の使用の一部を暫定的に制限することを決定しました。これを受けて、我が国でもこれらの殺虫剤に対する関心が高まっています。
この関心の高まりに応えて、蜜蜂への危害を防止することを目的として我が国で行っている取組を広く国民の皆様に知っていただくため、その内容をQ&Aの形で、農林水産省のホームページにおいて2013年8月から紹介しています。
出典:農林水産省も翌年には国内の取り組みを発表(2014.9月改訂)

このような流れがあった中でも、今回日本は、ネオニコチノイド農薬3種(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)を含む農薬の使用を緩和しようとしています。

新基準値案を公表した2013年6月には、各市民団体より「緩和しすぎ」だと心配の声があがり、子どもへの健康被害なども同時に懸念されました。
2014年12月24日、厚生労働省食品衛生審議会の農薬・動物用医薬品部会は野菜を含む食品に残留しても良いとする「水準」を大幅に緩和する新基準値案を「妥当」とする結論をまとめました。
今回この部会が「妥当」と判断したことで、今後、農薬試用水準が大幅に緩和される可能性がでてきました。

具体的な数字で確認してみる

緩和対象は作物により異なりますが、日頃食卓に並ぶ野菜を例にその数字を見てみましょう。
極端な例でいうと「カブの葉」。約2000倍と、極端に緩和されます。

  • カブの葉 →約2000倍
  • かぶ →約25倍
  • みつば →約1000倍
  • 春菊 →約50倍
  • ホウレンソウ →約13倍
  • 白菜 →約6.7倍

出典:国際環境NGO グリーンピース http://www.greenpeace.org/japan/ja/

「ホウレンソウ」の残留基準は、現在の3ppmから40ppm(約13倍)になります。
厚労省は子供が40ppmのクロチアニジンが残留する「ホウレンソウ」を多めに摂取した場合でも、急性参照用量を下回り、健康への影響がないとの試算結果を出しています。

ミツバチだけでなく人間にも影響がある?

ネオニコチノイド系農薬は、主に殺虫剤として使用され、人へのリスクは従来使われてきた有機リン系殺虫剤よりも小さいと言われいます。
日本では、動物実験などを通しネオニコチノイド系農薬は人の健康に影響がないものとしています。

一方、欧州食品安全機関( EFSA)(欧州委員会に食品の安全について専門的助言を行う独立評価機関)では、2013年12月に人体に有害な影響を与えるかもしれないという発表をし、先述のように実際に使用を停止しています。

出典:2013.12.17 欧州食品安全機関(EFSA)http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/131217.htm

最後に

EUで環境や健康への安全が疑問視され使用が停止されている農薬を、日本では現状よりも「さらに」緩和する可能性が高いという事実を知っておきましょう。
日本の残留農薬の基準値は、EU基準の2倍~100倍も緩いと言われていますが、土壌環境や気候・栽培方法が異なるため、基準を世界で一律にするのは大変難しいのが現状です。

作物に吸収される農薬の有効成分は全体の約5%といわれ、残りの多くは土壌と土壌中の水分に入り込み,土地や河川に長期間にわたり残存し蓄積します。
これらの残留農薬は野菜の表面だけでなく土壌・河川汚染への影響もあります。

オーガニックや有機栽培の条件に「その土地で決められた年数、指定農薬を使用しない」という項目が入っているのはそのためです。

お野菜を買う前に、少し手に取って考えてみましょう。


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